例えばそれは天秤のようで

例えばそれは髭を抜き取られた猫のようで

例えばそれは分子になっていない水素原子のようで

限りなく不安定な存在。


足場はあるけれども
その足場を支えているのは棒一本だけで
少しでも踏み外せば落ちてしまいそうで



僕は落ちないよう必死で

右に傾けば左へ動き
左に傾けば右へ動き

後ろへ傾けば前に進み
前へ傾けば後ろへ戻り

繰り返し繰り返しそれを続けている。




常にどこかに傾いているこの足場
他には何もないから
この命を永らえる為には
ここに留まる他ない。




そして今日もまた

右に傾けば左へ動き
左に傾けば右へ動き

後ろへ傾けば前に進み
前へ傾けば後ろへ戻り

その繰り返し。




そんな限りなく不安定な所に立つ
限りなく不安定な僕。












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